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目標設定の質

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム79

達成/未達の判断がつかない目標は単なる妄想

M&A中期経営計画の目標設定、プロジェクトでの目標設定、人事評価のための目標設定・・・
普段の仕事で何かしらの目標設定を行う機会は多い。
そういった目標設定を行う際に重要となる5つの要素を表現したフレームワークとして「SMART」というものがあり、MはMeasurable(測定可能な)を意味している。これは、「目標の達成度合いが第三者的に判断できる」という意味であるが、実は疎かにしがちな要素なのではないかと感じている。
例えば、あるプロジェクトにおいてマネージャーに任命されたとき、個人として「プロジェクトメンバーのやる気を鼓舞して、積極的に参加させる」という目標を設定したとする。一見すると良い目標設定に聞こえるが、プロジェクト終了時に、この目標が達成されたか否かを客観的に判断できるかを考えると、なかなか難しいように思う。
こういった客観的に判断できない目標は、結局のところ、人事評価を曖昧にしてしまうなど、事後に良くない影響を及ぼしてしまう。
客観的に達成/未達を判断できない目標は、「~したいな」という妄想に過ぎず、建前だけになってしまう危険をはらんでいるのではないだろうか。

目標が妄想になると実行・改善のサイクルは回らない

目標設定がPDCAのPの部分だとすると、目標が妄想になってしまうことによって、DCAの部分の質が下がってしまうことが懸念される。妄想ベースだと、具体的に何を実行すべきなのかが曖昧になるし、言わずもがな達成/未達の検証も出来ない。また、検証できていないため、改善のためのアクションも起こしづらい。
このように考えると、PDCAの起点となるPlanの部分で行う目標設定の質はとても重要だと言える。
たしかに、中期経営計画で定める目標設定であれば、経営数値をKGI/KPIとすることが多いため、客観的な数値で達成/未達を判断することが可能な場合が多い。一方で、人事評価を行うための個人やチームの目標設定を行う際には、定性的な目標設定が求められる場面も多く、そういったケースではMeasurableであるかどうかを強く意識する必要があるのではないか。
私自身も新たなプロジェクトにアサインされる度に、そのプロジェクトでどんな事を達成したいか、どのようにプロジェクトに貢献したいか等といった観点から定性的な目標設定を行っているが、Measurableを意識すると考え込むことも多い。

個人目標の設定では目標が妄想になりがち?

以前アサインされたプロジェクトで、私は「毎回の会議で意味のある発言を積み重ねる」という目標設定をしたことがある。常日頃から会議の中での存在意義を示すために意識していることであるが、この目標をプロジェクトマネージャーに示したところ、「この目標が達成できたかどうかって、個人の主観によってしまうよね」と言われ、目標の再設定を求められた。
先述したように、個人目標は定性的なものを設定することも多いため、このような事態に陥りやすいと思っている。
上のような非客観的な目標は、個人の意識として持っておく分には構わないが、他人から評価される対象としては不適切である。
クライアント先でも同じような光景を目にしたことがある。そのクライアントでは、社内プロジェクトが立ち上がると、メンバーそれぞれが個人目標を設定して、それが期末の評価に反映される形になっていた。一度気その目標設定シートを見せてもらったことがあるが、やはり定性的な目標に関しては客観的な判断の難しいものも散見された。

目標設定の質向上が組織や個人のレベルを底上げするのでは

では、目標が妄想になってしまわないためにはどうすればよいか?これはケースバイケースなので、一概に答えがあるわけではないと思うが、評価者の立場になって考えることが、目標設定の質改善の第一歩のような気がする。
M&Aや新規事業立ち上げの際には、社内でプロジェクトを組成して進めていくことも多いと思うが、そのような会社の行く末を左右するような重要な局面こそ、個人レベルまで目標設定の質を高めていくべきではないだろうか。そうすることで検討の質もメンバーの成長の幅も大きく改善されるように思っている。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏