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グループ会社間の心理的障壁を取り除くには

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム53

「〇〇様」と書いたら怒られる?

「グループ会社の〇〇様との打ち合わせ予定は、来週の予定です。」と、社内で報告連絡をすると、上司より注意を受けることがあった。「グループ会社と協業を進めていく上で、相手のことを「〇〇様」と呼んでしまうと、無駄に敬いすぎてしまっている印象があり、壁が生まれてしまう」というのが指摘の主旨であった。もちろん法人格は違えども、グループ会社は協業していく仲間であり、社員同士距離感は近いほどやり取りが活発化されるに違いない。何も自分から相手の名前に「様」をつけて、距離を置くようなことをすることでも無い、と上司からの指摘でハッと気付かされた。

呼称からも会社間の距離が測れる?

しかし、なぜ私は無意識に、グループ会社の相手社員のことを「様」と呼んでしまったのだろうか?ふと自分の過去を振り返ってみると、新卒で入社した商社時代の経験を思い出した。当時新卒で配属された営業部署では、持ち分100%のグループ会社との取引が多くあり、日々電話やメールでのやり取りが頻繁に行われていた。ある時、私がグループ会社の社員に対してメールを打つ際に、「○○さん」と文頭に書き、メールを送付したところ、当時の上司に酷く怒られたことがあった。その時上司からは、「グループ会社とはいえ、法人が異なるのだから、「様」をつけるのは当たり前だ。「さん」づけは失礼にあたるので、今後は止めるように。」と指導を受けた。もちろん当時の上司の言い分にも理はあるし、メールで使用する文面・呼称については、各会社の組織文化やグループ会社との関係性によって、適切に対応していく必要があることは承知している。
しかし思い返してみると、当時の所属していた部署とグループ会社の関係は、お互いが、無用に会社と会社の違いを強調し、心理的な距離感が大きくあったのではないかと、今となっては感じている。グループ会社同士の協力を通して、顧客のためになるサービスを提供し、グループとしての収益をあげていくことが、グループ会社同士で目指していくべき本来の姿であるはずである。呼称の使い方はあくまで一例としても、グループ会社同士で協業を進めていく際に考えるべきこと、変えていくべきことは他にもあったのではないか?少なくとも、日々のやり取りの中で自分から敢えて距離感をとるような言動は取らず、会社の垣根を超えて、協力関係を築いていくために、自分から出来たことはあったのではないかと感じている。

「グループ会社同士の距離感」を切り口に、協業阻害要因を特定する

M&Aを進めていく際は、当然買収前にM&Aによりシナジー効果を計算し、親会社と子会社でそのシナジーを実現していくための計画が策定される。しかし、いざ買収後に計画を進めようとすると、親子間での協業が計画した通りに進まないケースが多くあるのではないか。もちろん、M&A実行前に立てた計画の巧拙に左右される部分も大きいが、親会社・子会社の社員同士の距離感の遠さが要因で、協業が上手く進んでいないケースもあると考えられる。実際我々がご支援をさせていただいたケースでは、それぞれの会社の歴史や文化、社員の特徴といったソフトな側面に、距離感が生まれている要因を見出すことができた事例がある。会社間や組織間での距離感の遠さが問題になっている場合には、人事制度や会計制度といったハード面からの分析だけでなく、会社や社員の特徴といったソフト面からの分析も行い、距離感を生んでいる要素を両面から分析することも方法があることも留意しておきたい。

MAVIS PARTNERS アナリスト 橋本良汰