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ESGは投資評価項目として一般化してきているか?~ESGから求められるリターン~

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム31

ESGを身の回りで考えてみる

銀座でケーキを買うときに、スプーンどうしますか?と聞かれた。店頭の説明が書かれた表示を見ると、無料でプラスチックのスプーンを配るのをやめて、希望者に有料で木のスプーンを付けると書かれていた。レジ袋も有料になってエコバッグの持ち歩きは当たり前になった。どの頻度でエコバッグを洗えばよいのか、最近の悩みではあるが・・・最近、ESGという言葉をニュース、メディアで頻繁に見かける。直近では、日本生命が「ESG投資」の手法をすべての投資や融資の判断に導入することを発表した。日本の投資機関の97.9%がESG情報を投資判断に活用しているとのアンケート結果(経済産業省「ESG投資に関する運用機関向けアンケート調査」2019年12月)もある。これまではCSRとして環境への取り組みや新興国の恵まれない子供への支援などを行い、企業が社会的責任を果たし、ブランドを護る活動は認識されてきていた。いい取組みをしているよねといった形で社会に評価され、収益と必ずしも結びつかなくてもよかった。
しかし、投資家が評価しているESGは、中長期的な時間の流れでよいが、リターンと結びつかなければならない。すなわち、企業は投資家からESGを企業の成長や収益と結びつけて説明することが求められていて、従来の社会的責任のための活動とは異なってきているのである。

投資家が見るESGの意味合い

ESGとは、気候変動、環境汚染等の環境(Environmental)、社会問題等やステークホルダーとの関わり等の社会(Social)、コーポレートガバナンスのガバナンス(Governance)の要素を考慮して行う活動を意味する。機関投資家の行動規範を定めたPRI(国連・責任投資原則)の準備過程の中で、2004年頃に誕生したとされていて、公表資料ではUNEP-FI(国連環境計画・金融イニシアチブ)の2005年の報告書でESGという言葉が始めて使用されている。ESGは機関投資家の行動規範から生まれてきたものであるので、投資評価と密接に結びついているものなのである。2006年に制定されたPRIは、2020年現在、約3,000もの機関投資家が署名している。日本でも、2014年に金融庁が制定したスチュワードシップ・コードでは、投資家にESG情報の活用を求めている。
機関投資家はESG担当を置いており、決算説明会やスチュワードシップ・コードのエンゲージメントの企業との対話の中で、企業に説明を求めてくる。投資家はESGを指標として中長期的な観点で企業価値の向上を判断し、運用パフォーマンスを見ているのである。

どのようにして考えるか?

どのようにして取組みを考えればよいのか?であるが、先ず企業の課題を洗い出す。そしてその課題の解決を考える中でESG視点をもつのである。企業の課題を解決すれば企業の成長に自然とつながっていく。更に投資家へは数値での説明が求められている。企業の成長の部分は財務指標(経済価値)として、ESGでの貢献は非財務指標(社会価値)として数値で示すのである。例として、画期的な医薬品を開発して販売し、「●円増額・増益」となって財務パフォーマンスに貢献するとともに、「世界の●人の命を救った」とか、食品を提供している場合に、「廃棄率を●%削減して収益率を●%アップ」するとともに、「フードロスを●%削減した」といったものになる。また、Gである内部統制の再構築は、中長期的に企業の成長や収益の向上につながっていく。日本生命によると、「ESG投資の視点で評価が高い企業は、高い運用益が得られる傾向がある」とのことである。
これからの企業は、従来にも増して高い視座での中長期的な企業価値向上となる事業計画策定を求められているのである。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 竹森久美子