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新規事業を考える際の”よそ者”の適切な使い方

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム37

事業内容を考えることを”よそ者”に委ねてはいけないのでは

これまでいくつかの業界のクライアントから、戦略策定や新規事業立案のご依頼を受け、ご支援させていただく機会があったが、そんなときによく聞く言葉がある。「御社(コンサル)から何か新規事業の提案は無いのか?」といったような、外部の人間である我々コンサルタントに事業アイデアを求めてくるフレーズだ。
確かに第三者の視点からアイデアを出してくれることで、もっと広い視野で事業を検討したいという気持ちは分かるのだが、そんな外部から出てきたアイデアに対して、社内の人間が熱を持って取り組み、事業を成功に導くことが本当に出来るのだろうか。
社内の人間で再度アイデア出しをする材料として、参考までに言ってほしいという意図だったのかもしれないが、そうでなく事業化候補となるようなアイデアを求めていたのだとしたら、コンサルタントのような外部の人間が考えたアイデアに会社の業績を委ねる姿勢に違和感を覚える。

他人のせいにするという逃げ道があると事業は成功しないのでは

先日、全国で900店舗弱を展開する大手コーヒーショップチェーンの社長が某経済系テレビ番組で次のように言っていた。
「昨日まで従業員だった人が独立して、次の日に会ったことがあるが、「昨日までと何が変わった?」と聞いたら、「昨日まで気にならなかった扉の傷が気になる」と言っていた。」
従業員だったら、店が上手くいっていないときに、「本部の開発した商品がよくなかったから」とか言い訳して何もしなくても給料は出るが、もし仮に自分の店となったら、何ができるかを必死で考えるはず。他人のせいには出来なくなるからだ。
同じ理由で、やはり外部の人間が出したアイデアを成功させるというのは難しいのではないかと思う。当事者意識のない外部の人間が本当に筋の良いアイデアを出すとは限らないし、実際に事業を推進するとなった時に、社員は元々その事業に対して想いが無いことに加え、上手く行かない時に「そもそもアイデア自体が微妙だった」とかいくらでも言い訳が出来てしまうからだ。

地方の衰退も人任せのツケ

最近地方都市の百貨店が閉店するニュースを聞くことが多くなった。しかもそれは財政基盤の弱い地方ローカル百貨店だけの話では無い。三越伊勢丹やセブン&アイ・ホールディングスといった大手も複数の地方都市百貨店を閉鎖している。
ただでさえ空洞化を起こしている地方都市の中心市街地の百貨店跡地に、新たな施設を作って賑わいを取り戻すことは容易ではなく、実質廃墟となった建物が長期間残ってしまい、衰退が加速する事例も珍しくない。
これらの店舗の中には100年以上に渡って地域の住民から親しまれていたものも少なくない。にも関わらず閉店を決断するに至っているのは、その地域でなんとか生き抜いていこうという発想よりも先に、経営の効率化を考えるからだろうと思う。もちろん株式会社である以上、成果の上がらない不採算店舗は閉めるべきなので、この判断は正しいと思うが、こうやって”よそ者”に任せていた部分からボロが出てくるのは、地方都市においても同じだと感じた。

“よそ者”を使う利点もある

では新規事業を考える際に、外部の人間を全く使わずに自分達だけで考えるのが必ずしも正しいのかというと、そうではないと思っている。
以前、クライアントの新規事業立案者から、事業アイデアを聞かせていただくことがあった。アイデア自体は非常に将来性もあり、ワクワクする内容であったものの、「商品のコンセプトは何故そうなるのか?」であるとか「なぜその販売チャネルで攻めるのか?」といったような戦術の部分を的確に経営陣に説明できるようなロジックが明確に見えていなかったため、我々コンサルは、そういった新規事業を考える際によく使われる検討プロセスを示し、ロジック組み立てのサポート役を担うという役割でご支援させていただいた。
こういったような、内容そのものではなく、内容を考える前段にある考え方の部分で、客観的な視点から外部の意見をもらうことには意味があるのではないだろうか。
クライアント側が考えるべきこと・意思決定すべきことと、コンサルタントが価値を出すべきことを意識しながら、場合によっては会社の命運を左右する新規事業の検討を最大限サポートしていきたいと考えている。

MAVIS PARTNERS アナリスト 井田倫宏