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自分のやり方・考え方をいかに組織に浸透させるか

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム69

移植先の選定が重要

どんな職業でも、普段の仕事の中で、自分や会社の持っているやり方・考え方を他人に浸透させなくてはいけない場面は多々あるのではないだろうか。例えば、会社の後輩に仕事のやり方を伝えるのもその一つだ。
そんなときに重要になってくるのが、そのやり方・考え方をまず誰に移植するか?だと思っている。そのやり方・考え方を移植させたい人が沢山いたとしても、その中のキーパーソンにさえ移植できれば、その後は自然と周りにそのやり方・考え方が波及していくからだ。
上記で挙げた、後輩に仕事のやり方を伝えるケースで考えてみる。後輩と一口に言っても、自分のやり方を移植することで、戦力にしたい後輩は一人ではなく、複数人いることが多いと思う。そんなときに、仕事の飲み込みの早い後輩にしっかりと仕事のやり方を伝え習得させることで、あとは後輩同士でそのやり方をシェアすることを求めれば、自分の労力は最小限で済む。

知らない間にMAVISのノウハウがクライアントに浸透

とあるクライアントをPMOとして支援していたとき、我々はクライアント社内で走っている複数のプロジェクトや分科会を管理することに加えて、コンサルタントとして持っているファシリテーションや資料作成のスキルを中堅社員に移植することが期待された。その中で、我々の行っていた会議設計のやり方が、自然とクライアント社内で浸透していった出来事が印象に残っている。
PMOとしての業務が始まった最初の2~3ヶ月間、私はとあるプロジェクトを任されていたリーダー(クライアント社内の部長)と一緒に、週次で行われる定例会の準備を行っていた。その中でも、会議前に行う設計に関しては、MAVIS社内でも活用している「会議設計シート」というものを使って、会議準備のやり方を伝えていたのだが、そのリーダーはこの「会議設計シート」を非常に重宝し、「今後はこれをつかって社内会議をやっていきます」と言ってくださった。
それから半年後、そのクライアント社内の別の方と話していたとき、その方が「会議設計シート」を活用していることを知った。
最初から意図していたわけではないが、上記で挙げたリーダーは社内でも人望が厚かったため、その人を起点にクライアント社内で「会議設計シート」が浸透したのだと思った。

キーパーソンの選び方は様々

キーパーソンの選び方はケースバイケースである。
最初に例として挙げた、仕事のやり方を後輩に伝えるケースであれば、能力面を重視すべきだと思っている。仕事を覚えるのが早い方が、人間にやり方を習得させ、自分の分身となって他の後輩に伝えられる状態するのが楽だからである。
一方で、様々な役職の方々に広くやり方・考え方を浸透させたいケース(上記のPMOのケース等)では、能力面だけでなく、その人の役職や人望等も重要な観点になる。たとえ能力が高く、すぐにやり方を習得できたとしても、その人の役職が高くなかったり、部下や関わっている人が少なかったりした場合、その後の浸透は期待しづらい。
対社内であれば、このような人に対する評価はしやすいが、対社外となると難しくなるため、特に対社外でキーパーソンを見つけ出す必要がある場合には、ミスマッチが無いように慎重にならなくてはいけないと思っている。

新規事業開発でも移植先を意識したい

以前とあるクライアントに対して、新規事業の立ち上げ支援を行っていたことがある。その新規事業は、クライアント社内の一人の発案で事業化したものの、発案者以外のメンバーの事業に対する熱意がなかなか上がらず、一体感を持った推進に苦労していた。発案者は自分の考えた事業であるため、責任感を持って取り組むことが出来るが、その他のメンバーは全く関係のない部署から集められたという経緯もあり、そのような状況になるのは必然だった。
こんな状態のときにも、キーパーソンを見つけ、その人を起点に考え方を浸透させるという工夫が必要なのではないかと思った。
新規事業やM&A後のPMIでは、いかに関係者を巻き込んで一体となって進められるかが重要とはよく言われるが、むやみやたらに考え方や理念を訴求するのではなく、「誰に?」を強く意識して、効果的な考え方の浸透を考えていくべきだと思った。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏