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M&Aコンサルタントのマインドセットとは?

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム45

弊社採用の観点は、自分事で考えているか?

弊社の採用プロセスでは、必ず、面接の前に、選考課題というものを課している。1週間という期限で、想定クライアントからの依頼に対して、コンサルタントとして成果物をつくってみるというものだ。「PPTじゃなきゃダメですか?」とか、「テンプレートはどれを使えばいいですか?」とか、体裁に関する質問もあるが、評価しているのは内容のみ。クライアントのお悩みごとに対して、きちんと想像できているか、共感できているか。そして、クライアントが喜びそうなモノを自分なりに設定して、それを具現化できているか。そういった点を評価している。
この選考課題は、内容は変われども、MAVIS設立時からずっと選考プロセスに組み込んでいるものだ。中途採用でも、インターン採用でも全く同じ。評価軸も評価基準も変わらない。たまに「自分は経験がないから出来なかった」と言う応募者もいるが、経験は関係ないと考えている。実際、通過率は、中途採用の応募者より、インターン採用の応募者の方が高い。ビジネス経験やコンサル経験より、大事なものは別にある。一言でいうならば、いかに自分事でクライアントが抱える問題を捉えているかだろう。それは、経験というよりも、クライアントと向き合う姿勢だ。

分析屋の他人事コンサルは不要に

つい先日、弊社の顧問と、あるプロジェクトについて議論する機会があった。そのとき、「今は自分の軸を持っているコンサルタントが求められているんだよ。だって、経営者が方向に迷っているからねぇ。」という話をされた。
なるほど、と思った。私も10数年、このコンサル業界にいるが、この10年でも業界における変化は感じている。10年前は、まだギリギリ、コンサルタントのフレームワークやら考え方が持て囃されている部分があった。分析の仕方や、観点の整理の仕方、そういったものが、多少は価値が残っていたように思う。その次に持て囃されたのが、ベストプラクティスだ。コンサル会社によっては、インサイトという言い方もするようだが、要は、業界の中でどうすれば上手くいくのか?といった事例であり、知見を指す。特に、グローバルファームでは、グローバルでベストプラクティスをストックし、それが競争力の源泉にもなっていたように思う。私自身も、若かりし頃に「グローバル知見をローカルにカスタマイズするのが付加価値だ」と、先輩から言われたこともある。
しかし、クライアントの中でもそういうフレームワークや業界知見は当たり前の時代になってきた。リサーチツールや、識者インタビュー斡旋サービスが増えれば、「コンサルじゃないと知れないこと」は相対的に減ってきた。加えて、クライアントの中にも、元コンサルタントが増えてきたし、或いは、トップティアのMBAでコンサルタントと喧々諤々議論して鍛えてきた人も多くなった。
要は、他人事で客観的にモノを言うコンサルは、どんどん必要とされなくなってきた感がある。むしろ、「自分だったらこうします」という“我”が求められる機会が増えてきたと感じており、その顧問がふと言ったことが、とても自分に刺さり、えらく納得してしまった。

他人事でいる限り、M&Aコンサルタントは務まらない

では、我々コンサルタントはどうすべきか?どうあるべきか?結局、自分だったらどうするかを常に本気で考えていないといけないということなのだろう。日頃から、クライアントの問題意識と類似した経験がないか、目を凝らし振り返っておくこと。そのとき、自分がどういう考えて、どう判断して、何をして、結果どうなったか、教訓は何なのか、そういった“自分の経験”をストックしておく必要がある。そして、いつでもクライアントには、実体験ベースで語れるようになり、自分の軸で問題解決の提言ができるようにならないといけない。
自分たちが提言したとき、クライアントから「わかりました。では、明日から代わりにやってください。」と言われ、100%自信を持って、「任せてください!」と言えるかどうか。そこが基準になると思う。仕事を「仕事」と思ってやっている限り、その境地には達しない。いかに、自分事として物事を捉えられるか、相手になりきることができるか。
特に、M&Aを扱うコンサルティングの場合は、それが強く求められると思う。弊社は、既存クライアントから要望が無い限りは、仲介は原則やらないことをモットーにしている。だからこそ、「私だったら、XXXという理由で、買収しないです」と言い切れる。「自分だったら、こう考えますけど、あなた達は、どうしたいのですか?」と言えるように、自分達の軸を日々磨いておかねばならない。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴