- M&A戦略 MAVIS PARTNERS株式会社 - https://mavispartners.co.jp -

コンサルとハサミは使いよう(特にM&Aでは)

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム15

コンサルを使いこなせている会社はごくわずか

かれこれ十数年コンサルタントをやっているので、それなりの数のクライアント企業を支援してきたが、コンサルを上手く活用できている企業は少ないように思う。「企業」というより、「担当者」に依るが、「高いお金を払って、こんなことを頼むの?」と思うこともあれば、内製化にこだわり過ぎていて、「それは外部に任せたほうが効率的なのになぁ」と思うこともある。「コンサルなんて馬鹿だし、使えない」と根っから嫌っている人も中にはいるが、コンサルは上手く使えば、強力な外部リソースになり得る。その使い方についてコンサルタント視点から述べたい。

コンサル起用の目的3パターン

コンサルが起用される目的は、大別すると3つあると考える。

1つ目が、権威付けパターン。経営としてやらなければならないことや方向性は既に決まっているが、それを社内外に周知して納得してもらうために、外部のお墨付きが必要な場合に起用される。トップマネジメントの考えを、第3者意見で裏付けたいという動機が背景にはある。これは特に大企業で利害関係者が多い場合によくあるパターンだ。

2つ目が、高級派遣パターン。こちらも経営としてやるべきことが既に決まっているという点では1つ目と同様だが、起用目的は、社内では人員不足で工数が割けない場合や面倒な場合に、外部リソースを借りるというもの。新たにゼロから人を採用して、人的リソースを確保するよりも、その領域に精通している人材を一時的に起用した方が、遥かに効率が良い。

3つ目が、企業参謀パターン。クライアントが今何をすべきか分からない、最も悩みが深い場合に相談されるのがこのパターンだ。世の中の“外資系戦略コンサルティングファーム”のイメージは、これに近いのではないだろうか。高い視座、新しい切り口、斬新な組み合わせ……それらを駆使して、仮説構築と仮説検証を繰り返しながら、クライアントが進むべき道を見出していく。

起用目的の認識のズレが不幸の元

これら3つのパターンに優劣があるわけではないが、1つ目の権威付けパターン、2つ目の高級派遣パターン、3つ目の企業参謀パターン、それぞれの起用目的を明確にしておかなければ、クライアントは期待した成果を得ることは出来ない。プロジェクトごとに、コンサルの起用目的をキレイに分類できるわけではないが、濃淡は確実に異なる。

不幸なのは、その濃淡の認識が、クライアント側とコンサル側で齟齬がある場合だ。例えば、クライアントが「このコンサルはこちらが言ったことしか考えないし、やらない」と憤慨するケースは期待値のズレが原因の場合が多い。“コンサル”と聞いて、「常に何か提言する仕事」と思うのは、その人のステレオタイプだ。起用目的が3つに分かれるのだから、コンサルにも色々な種類がある。どれに優劣があるわけではない。クライアントに十分に役立っていれば、それは立派なコンサルティングという仕事だと私は思う。

クライアント側で出来る工夫とは?

上述の期待値のズレを無くすためには、契約前に、RFP(Request For Proposal)として、クライアント側がコンサルに求める期待水準を明確にして、要求を正しく伝えることが重要だ。何に困っていて、何をお願いしたいのか、最終的に何があればハッピーなのか。もし、その前提が曖昧ならば、そこからコンサルと議論すれば良い。ブレスト段階の議論ならば無償対応してもらえるだろう。また、コンサルからもらう提案内容は、「一緒に作り上げる」という感覚が良いと思う。そのやり取りの中で、コンサル側の柔軟性や担当者との相性が分かる。提案内容は、納得いくまでフィードバックして跳ね返す。それに喰らいつき対応できるコンサルならば、プロジェクトにおいても、臨機応変に動いてもらえるはずだ。各社からの1回だけの提案内容だけで発注可否を判断してしまうのは、実に惜しい。各社の良さを引き出せていない。当然だが、相手の実力を見極めるには、実力を十分に発揮させること。それはクライアント側の工夫にも掛かっていると私は思う。

M&Aでは工程ごとにパターンは変わりがち

なお、M&Aにおいては、M&A戦略、Deal、PMIと3フェーズに分けられることが多いが、それらフェーズの特性ゆえ、M&A戦略に対しては企業参謀パターン、Dealに対しては権威付けパターン、PMIに対しては高級派遣パターンと、フェーズごとに起用目的が異なる傾向がある。殊に、M&Aは多額の投資と多大なる工数が割かれる取り組みなので、どの企業も絶対に失敗したくないテーマだろう。とすれば、パートナー選びにもこだわるべきだ。最低限の工夫として、M&Aコンサルの起用目的を明確にすること、複数社に相見積もりをすること、提案書作成段階のやりとりでコンサルの柔軟性と相性を診ること。是非、それらに留意されたい。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴