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コンサル出身は事業会社で活躍できるか?

M&A戦略 MAVIS PARTNERS コラム111

M&Aコンサルに必要なこと

M&Aコンサルに必要なことを挙げよ、と言われれば、「M&Aの工程別に違います」という回答になる。M&Aは人によっても定義や解説は違うが、おおかた、M&A戦略策定フェーズ、ディールフェーズ、PMIフェーズと区分されることが多い。区切りがどこかも諸説あるが、およその3工程で俯瞰したとき、各工程で求められるスキルはだいぶ異なる。
M&A戦略策定フェーズでいえば、いかにキーとなるファクトを揃えて、ロジカルに組み立て、有益な示唆が出せるかに尽きる。他社が見い出せなかった魅力的な領域が見い出せるか。当該領域のポテンシャルはいかほどで、自力で参入すべきか、他力(M&A等)を使うべきか。M&Aならば、求める企業要件が何で、合致する企業はどこか?こういった一連の検討には、いわゆるロジカルシンキングや仮説思考が重要だ。
ディールフェーズは、圧倒的に専門知識が求められる。デューデリジェンスも経験者と非経験者では、質の差が大きくなるのは明らかだし、バリュエーションはそもそも、ファイナンスの素養が無ければ難しい。細かいことを言えば、EXCELのモデルの組み方も知らない未経験では、実務に耐える成果物を出すのは難儀だろう。また、ビジネス法務についてもある程度は知っていないと、関係者と議論にすらならない。
最後にPMIフェーズで重要になるのが、コミュニケーションスキルだ。利害関係がうずまく環境で、関係者の利害調整をしながらも、やるべきことを遅滞なく進められるか、牽引できるか。また、意見を引き出し、議論を組み立てるファシリテーションスキルも必須だろう。
M&Aは異種格闘技戦とも言われることがあるが、このように工程別に様々なスキルやナレッジが必要なことは確かだ。

コンサルに必要なこと

しかし、これはM&Aコンサルという切り口で見た時の話であって、抽象化すれば、コンサルという仕事はおおよそ同じなのではないかという気もする。
ファクトをしっかり集めて、ロジカルにストーリーを組み立て、検証したうえで、仮説の精度を高めること。要は、なるべく妥当解に近づける作業だ。高尚に言えば、あらゆる知識や知恵を振り絞って、真理に近づく行為とも表現できるかもしれない。
ただし、その解が導出できたとして、それをステークホルダーに上手く伝えることも重要だ。伝え方次第では、いくら真理に近い内容と言っても、反感を買って聞いてもらえないかもしれない。相手の気持ちを汲み、相手が納得する表現で、相手が受け入れやすいサイズで伝えることに留意しなければならない。そういった意味では、やはりロジックに加えて、ソフト面のスキルもコンサルタントには必須だろう。
加えて、専門ナレッジがあれば、コンサルとして鬼に金棒だ。ファクトをロジックで積み上げる以前に、正否が決まっているような問い、相手が納得するか否かに関わらず、原理原則として正と認められるようなことに関しては、知っていれば知っているほど武器になる。M&Aコンサルでいえば、それがM&Aナレッジなのだと思う。

結局は適応できるか

ただ、自分でも書いていて思うが、ロジカルであること、ソフトスキルがあること、そして専門性があることは、コンサルに限らず、どの分野の仕事でも、汎用的に求められる要素であり、これら3つを兼ね備えている人材は重宝されるに違いない。ということは、コンサルは、どの分野でも活躍できるスキルが求められているとも言える。「いやいや、コンサル出身なのに事業会社で活躍できない人もいるよ」という声も聞こえてきそうだが、そういう方も確かにいらっしゃるだろう。ただ、私の知る限りでは、そういった方は圧倒的にソフトスキルが欠如しているか、或いは、置かれる環境によって、どこまでソフトタッチなコミュニケーションが求められるかが変わるため、それに順応する前には、各所で齟齬が生じてしまうのも仕方ないと思う。逆に、事業会社出身でコンサル会社に入ったときに、最初ぶち当たる壁はロジック面らしい。それも置かれた環境で求められていたもの程度感が違うからが原因だと見る。
結局、どんな仕事をするにしろ求められるものはだいたい同じ。ただ求められるものの程度感が違うだけ。それが正しいとすれば、キャリアチェンジに重要なのは、適応力と吸収力に尽きる。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴