連載:ESG

印刷

#9. ESG投資の投資手法

2021-04-20

ESG投資の対象

ESG投資の対象として、公開株式のイメージが強いと思う。しかし、ESG投資の対象は、非公開株式、債券、不動産など多岐にわたる。非公開株式、プライベート・エクイティは出資比率が高くなるため、エンゲージメント、すなわち、ESGに関する対話を企業とより積極的に行う傾向にある。債券は、グリーンボンド、インパクト投資等、出資する資金の使用目的を明確にすることができる。不動産は、グリーンビルディング等の認証を取得した不動産に投資する。グリーンビルディングは、建設や運営にかかるエネルギーや水使用量の削減、施設の緑化など、建物全体の環境性能が高まるよう配慮して設計した建築物のことで、サステナブルビルディングとも呼ばれている。

ESG投資の手法

それでは、ESG投資の手法について見ていこう。投資手法には、①ポジティブ・スクリーニング、②ESGインテグレーション、③ネガティブ・スクリーニング、④エンゲージメント、⑤サステナビリティ・テーマ型投資、⑥インパクト投資などに分けることができる。①ポジティブ・スクリーニングは、ESGの格付けを行って選別し、更にそれら投資候補企業の財務分析を行い、投資先を絞り込むものである。ESG評価の高い企業は中長期的に成長するとの考えに基づき、投資先企業を決定する。なお、業種ごとに投資先を選別する手法もあり、ベスト・イン・クラスと呼ばれている。②ESGインテグレーションは最近、主流になってきている。ESGインテグレーションは、通常の投資の財務分析のなかに、ESGに関するリスクや機会などの評価も含め、投資先を決めるものである。③ネガティブ・スクリーニングにはダイベストメントが含まれ、ESGスコアで評価することなく、環境的・社会的に望ましくないと思われる事業を行っている企業を除外する投資である。④エンゲージメントは対話を通じて投資先企業の経営に関わり、企業価値を上げていく。⑤サステナビリティ・テーマ型投資は、資金の使途を環境や社会に関する事業とすることを約定して債券を発行する。サステナビリティ・テーマ型投資について代表的なものにグリーンボンドがある。例えば、再生エネルギーの事業等、気候変動の緩和や自然資源の保全等の事業を行う企業に投資するファンド等が債券を発行するものである。⑥インパクト投資は、財務的リターンに加えて、ポジティブな環境面・社会面のインパクトを生じさせるという意図を持って行われる投資で、環境や社会に貢献する技術やサービスを提供する企業などが対象になる。2013年のG8議長国であったイギリスが設立した「社会的インパクト投資タスクフォース」が提唱したのが始まりである。投資対象は小さな非公開企業の割合が大きく、ベンチャーキャピタルが運営していることが多い。インパクト投資の最大の顧客は政府である。例えば、刑務所の出所者の再犯防止プログラムやがん検診受診率向上プログラム等、社会課題を解決するための資金を債券で調達、政府が成果に対価を支払い、債券を償還するという仕組みである。政府がこのようなインパクト投資のスキームに関わるのは、民間に受託した方が、行政コストを抑えることができるためである。インパクト投資は投資先企業に積極的に関与し、評価方法としては、インパクト・テーマ毎に共通のKPI、例えば医療費削減等を設定して、ポートフォリオで合算したインパクトを測定したりする。

ESG投資のトレンド

ESG投資手法は、このように様々あるが、グローバルで最も多い手法は、ネガティブ・スクリーニングである。日本で最も多い手法は、エンゲージメントである。グローバル、日本とも2番目に多い投資手法は、ESGインテグレーションである。特に日本でのESGインテグレーションの投資額の増加が著しく、2017年の約42兆円に対し、2019年は約177兆円と4倍以上増えている。ESGインテグレーションの評価は、環境の観点からは、気候変動問題をはじめとする環境問題への取り組み、社会の観点からは、ステークホルダー(顧客・取引先、従業員等)との関係、ガバナンスの観点からは、ガバナンスの仕組み、体制等が、それぞれに企業価値向上につながっているかを評価する。評価アプローチに、i) 定式化されたスコアメーキングとii) ジャッジメンタルなESG評価があり、i) 定式化されたスコアメーキングは、客観的・定量的な評価基準に沿ってESGスコアを決定するアプローチで評価の客観性・再現性が高い。一方、ii) ジャッジメンタルなESG評価は、評価の目的や考え方に照らして、アナリストが実質的な判断を下してESG評価を決定するアプローチで、個々の企業の特性・状況を勘案した柔軟な評価が可能となる。i)はESG指数、パッシブ運用に親和的で、ii)は企業との対話から評価し、アクティブ運用に親和的である。ESG投資資金を増やしたい日本の企業は、これら投資トレンドから、エンゲージメントとESGインテグレーションの投資手法を意識して、対話を積極的に行う姿勢を見せ、ESG指数を高めるため非財務指標も投資家にわかりやすく開示していくことを重視するべきである。

まとめ

① ESG投資の対象は、公開株式の他、非公開株式、債券、不動産など多岐にわたる。
② 投資手法には、1.ポジティブ・スクリーニング、2.ESGインテグレーション、3.ネガティブ・スクリーニング、4.エンゲージメント、5.サステナビリティ・テーマ型投資、6.インパクト投資などに分けることができる。
③ 日本ではエンゲージメントとESGインテグレーションの投資手法による投資額が多いので、これらを意識した対応をすべきである。

Contact

お気軽にお問い合わせください

お問い合わせフォーム