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#8. なぜESG投資なのか?

アイキャッチ

ESG投資は高パフォーマンス

ESG投資が機関投資家に選ばれるようになった理由は、端的に言えばパフォーマンスがよいと考えられているからである。これまで歴史のところで説明してきたように、2006年にPRI(Principles for Responsible Investment、国連・責任投資原則)が誕生、その後のリーマンショックで企業はリスク耐性や中長期的な企業の成長につながるESGの重要性に気づき、取組み始めた。中長期計画に基づき投資をしている年金基金や保険会社をアセットオーナーに持つ機関投資家等も、企業と同様の理由で、サステナビリティがあり、長期的なスパンで成長する企業を見定めるためにESG評価を投資の際のチェック項目に入れ、重視するようになった。
ところで、ESG投資にESG評価を厳しく取り入れるダイベストメントの考え方がある。ESGの観点にそぐわない事業を行っている企業をフィルタリングして除外することである。このダイベストメントが投資パフォーマンスの点から効果的であるかといえば、そういうわけでもない。米国年金基金のカルパース(CalPERS、The California Public Employees’ Retirement System)では、ダイベストメントの方針により運用パフォーマンスが悪化したとして幹部が交代している。現代ポートフォリオ理論の観点からも、このようにフィルタリングにかけ過ぎると、十分に分散投資ができず、逆にパフォーマンスが下がるとの考え方がある。

エンゲージメントの重要性

ESGへの取組みが不十分な企業については、エンゲージメント、投資家が企業の経営者とESGに関する対話をすることを通じて、ESG課題を改善すれば、株価に反映されて、投資パフォーマンスが上がる。企業はESG課題に対応できていなくとも、どのように改善しようと考えているかを機関投資家等に伝え、対話に積極的であることをアピールできれば、ESG投資の資金を集めることができるであろう。2020年に再改訂された機関投資家向けに策定されたスチュワードシップ・コードにて「ESG要素を含むサステナビリティの考慮に基づくエンゲージメントを通じて、企業価値の向上や持続的成長を促すべき」と記載されている。また、GPIF(Government Pension Investment Fund、年金積立金管理運用独立行政法人)も、ESG投資にあたってダイベストメントの考えをとらず、「ESG課題を抱える企業に改善を促す取組みが重要」と「2018年度ESG活動報告」の中で述べている。

実証研究での検証

ESG投資がパフォーマンスのよいことについて、実証研究から、どの程度、検証されているだろうか。Friede et al.(2015)*1では、ESG基準と企業の財務効果の関係についての1970年以降の研究2,200件以上をレビューした結果、マイナス効果はないとしたものが9割以上、更にポジティブな効果があるとしたものが6割程度と、ESGが企業価値に対して、プラスの効果の傾向にあることを示している。宮井(2008)*2では、23件の研究をレビュー、ESGファクターが運用パフォーマンスに正の影響を与えているとする論文は15本、中立的であるとする論文が4本、ネガティブな論文が4本であり、正の影響を与える論文が多いとしている。Eccles et al.(2014)*3では、米国の180企業を傾向スコアマッチングの手法により分析した結果、サステナビリティ・ポリシーを有する企業と、そうでない企業とを比較すると、長期的な株式リターンと財務パフォーマンスの両者で有意に上回ったとしている。リスク耐性を示している研究としては、Lines et al.(2017)*4があり、リーマンショック時においてCSR活動等で高い社会資本を形成した企業は、活動を行わない企業よりも株価急落のリスクが低いことを示した。概ね、これらの研究ではESGへの取組みが株価にプラスの影響を与えることを示唆している。このように実証研究でも、ESG投資は通常の投資よりパフォーマンスの高いことが示されているのである。

*1: Friede, Timo Busch and Alexander Bassen, “ESG and financial performance: Aggregated evidence from more than 2,000 empirical studies”, The Journal of Sustainable Finance & Investment (2015)
*2: 宮井 博, 「ESGファクターのパフォーマンス効果研究サーベイ」, NFI リサーチ・レビュー (2008)
*3: Robert G. Eccles, Ioannis Ioannou, and George Serafeim, “The Impact of Corporate Sustainability on Organizational Processes and Performance”, Management Science (2014)
*4: Karl V. Lins, Henri Servaes, and Ane Tamayo, “Social Capital, Trust, and Firm Performance: The Value of Corporate Social Responsibility during the Financial Crisis”, The Journal of Finance (2017)

まとめ

① ESG投資が機関投資家に選ばれるようになった理由は、投資パフォーマンスがよいと考えられているからである。しかし、ダイベストメントにより選別し過ぎると投資パフォーマンスは下がる。
② 企業はESG課題に対応できていなくとも、どのように改善しようと考えているかを機関投資家等に伝え、対話に積極的であれば、投資パフォーマンスが上がるので、機関投資家に歓迎される。
③ 実証研究においても、ESG投資は通常の投資より概ねパフォーマンスの上がることが検証されている。