連載:ESG

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#5. ESGの歴史③~グリーンボンド~

2021-04-14

グリーンボンドの誕生

グリーンボンドとは、全ての資金の使途を環境事業とすることを約定して発行する債券である。グリーンボンドを始めて発行したのは、2007年、EIB(European Investment Bank、欧州投資銀行)で、CAB(Climate Awareness Bond、気候変動ボンド)を発行した。次いで、2008年、IBRD(International Bank for Reconstruction and Development、国際復興銀行)がスウェーデンのスカンジナビア・エンスキルダ銀行と共同でグリーンボンドを発行した。このグリーンボンドは、発展途上国向けの温暖化防止対策を使途とする債券であった。その後、2014年にグリーンボンドについて市場の自主基準を設けたのが、GBP(Green Bond Principles、グリーンボンド原則)である。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、シティ・グループ、クレディ・アグリコール、JPモルガン・チェースの4行が中心となって策定、ICMA(International Capital Market Association、国際資本市場協会)が事務局を務めている。原則の内容は、①調達資金の使途、②プロジェクトの評価と選定のプロセス、③調達資金の管理、④レポーティングの4原則からなる。調達資金の使途先として、気候変動の緩和、気候変動への適応、自然資源の保全、生物多様性の保全、汚染防止及び管理の5つの環境目的に沿ったグリーンプロジェクトの事業区分をリスト化していて、投資対象事業がどれかに該当すればグリーンボンドの発行体は資金使途のグリーン性を示すことができる。

グリーンボンドの広がり

当初のグリーンボンドは公共投資の意味合いが強く、発行体も国際公的金融機関が中心であり、年平均10~20億ドルと市場は伸び悩んでいた。流れが変わったのは2013年で、市場が前年比5.5倍の110億ドルに拡大し、民間機関によるグリーンボンドの発行が始まった。リーマンショックのダメージが残っている中で、ウォールストリートの金融機関が新たに魅力のある市場として見出したのである。翌年の2014年に策定したGBPもウォールストリートの金融機関がメインで策定し、金融商品を取り扱いやすくするために自主基準を設けたものである。また、GBPは、第三者機関により評価を受けることを推奨している。外部評価機関は特定の資格要件を満たす必要はなく、市場機会を見出した外部評価機関はグリーンボンド市場に参入し、投資銀行や証券会社と一緒になって、発行が見込めそうな企業等に積極的に働きかけたため発行額が増加していった。また、PRIへ署名した機関も増加傾向にあり、ESG投資の対象を求めていることとマッチして、グリーンボンド市場は広がっていった。

日本での動き

グリーンボンドをめぐる日本での動きを述べる。グローバルでは2013年までグリーンボンド市場は盛り上がっていなかったが、実は日本では、それより前から個人投資家がグリーンボンドに積極的に投資する傾向にあった。日本の金利は超低金利で個人投資家は魅力のある商品を求めていたところ、資金使途が環境事業なためクリーンで、発行体が国際公的金融機関とリスクが低いため、日本の個人投資家の希望とマッチした。2010年、日興アセットマネジメントが「世界銀行グリーンファンド」を組成し、その後も証券会社が中心となり、国際公的金融機関発行のグリーンボンドを「売出債」として販売していった。日本の機関が発行体となる最初のグリーンボンドは、2014年10月、日本政策投資銀行が発行したものであり、GBPに沿ったものであった。海外では、これに先駆け、2014年3月にトヨタ自動車の米国金融子会社、トヨタ・モーター・クレジットも発行している。
日本でもグリーンボンドの基準として、環境省が2017年3月「グリーンボンドガイドライン2017年版」を公表した。内容はGBPの4原則に沿っており、日本語の事例付きでわかりやすく解説している。GBPと異なる点は、GBPは4原則全てを満たすべきとしているのに対し、日本のガイドラインは、4原則全てを満たさなくともよいとなっていて緩やかなものであった。2020年3月に環境省はガイドラインを改訂し、この緩和基準を削除、今はGBPと同等になっている。環境省は更に、発行体にセカンドオピニオン費用として補助金を出すことにより促進しようとしている。
投資家は、株式投資に関しては、スチュワードシップ・コードのエンゲージメントにより事業に積極的に意見を言うようになっている。債券投資についても、グリーンボンドのように資金使途について指定して投資できる時代が到来したのである。

まとめ

① グリーンボンドとは、全ての資金の使途を環境事業とすることを約定して発行する債券であり、自主基準としてICMA(International Capital Market Association、国際資本市場協会)が事務局となり、GBP(Green Bond Principles、グリーンボンド原則)が設定されている。
② グリーンボンド市場は2013年頃より、ウォールストリートの金融機関が新たな魅力ある市場として見出し、GBPも彼らがメインで策定して金融商品として取り扱いやすくするなどして広がっていった。
③ 日本では、早い時期から個人投資家がクリーンでリスクの低い商品としてグリーンボンドに魅力を感じ、積極的に投資する傾向にあった。環境省がグリーンボンドガイドラインを公表して国内市場を促進しようとしている。

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