連載:ESG

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#3. ESGの歴史①~PRI~

2021-04-02

PRI誕生の経緯

第1回のESGの定義の説明の中でESGという言葉は、機関投資家の行動規範を定めたPRI(Principles for Responsible Investment、国連・責任投資原則)の準備過程の中で、2004年頃に誕生したと述べた。今回は、PRI誕生の経緯、その後の状況について述べる。PRIは、2006年4月、国連グローバル・コンパクト(United Nations Global Compact)とUNEP FI(United Nations Environment Programme Finance Initiative、国連環境計画・金融イニシアティブ)の2つのイニシアティブが共同で事務局を担い、欧米の機関投資家も参加して策定されたものである。
その設立までの経緯を追おう。先ず、国連の補助機関であるUNEP(United Nations Environment Programme、国連環境計画)が1972年に設立され、当初より経済成長と環境保護の両立を目指していた。UNEPは、貧困、健康、森林保全等の環境と社会問題(つまり「E」と「S」)を解決するための環境計画と開発計画、「アジェンダ21」を提案、1992年の地球サミットで採択されたが、この計画を実現するためには資金が必要であった。そこで、UNEPは欧米を中心に銀行、保険会社、証券会社を巻き込み、1992年にこれらとのパートナーシップを結び、UNEP FIを設立した。UNEP FIのHPによると、「UNEPは200以上の銀行、保険会社、証券会社とのパートナーシップを結び、金融機関、政策者、規制当局と協調し、経済的発展とESGへの配慮を統合した金融システムへの転換を進めている」としている。そして、このUNEP FIでインターンをしていたシドニー大学の大学院生James GiffordがPRIを発案したと言われていて、GiffordはPRIの創設事務局長(Executive Director)を務め、機関投資家によるESGのエンゲージメント効果についての論文*を書いている。

PRIの広がり

PRIはUNEP FIから独立したNPO、正式にはPRI Associationという組織である。本部はロンドンにある。参加すると会費と年1回の活動状況の報告が義務づけられる。当初の参加機関は50機関であったが、2020年10月時点で3,389機関、そのうち、アセットオーナーが569機関(17%)、機関投資家が2,457機関(72%)、サービスプロバイダー(評価機関等)が363機関(11%)となっており、設立当初の約68倍にも増加している。PRIは機関投資家が参加して策定したものであり、賛同するアセットオーナー、機関投資家、評価機関等に署名を求め、会費を取り、活動報告を義務づけてコミットさせる。コミットの結果、PRIに署名したアセットオーナーや機関投資家はESG評価の高い企業を投資先として選ぼうとする。このため、ESGに積極的に取り組んでいる企業に、PRIに参加した機関投資家の資金が流れていく。彼らは長期的に株式を保有する傾向にあり、こういった機関投資家の株式保有割合が増えた方が安定的に経営できるので企業側にメリットがある。

PRIとESG評価

このように安定的な経営の観点で高いESG評価を取ることの意義は大きい。PRIの6原則の内容を簡潔に述べると、企業への投資に際して、①ESG評価を投資分析、意思決定に組込み、②議決権行使やエンゲージメントを行うなど積極的に関与し、③情報開示を求め、④資産運用業界に働きかけ、⑤PRI参画機関で協働し、⑥PRIに活動状況を報告するというものである。ところで、ESG評価といっても、一般的な財務観点での評価よりESG観点での評価は難易度が高いのも事実である。財務データのように企業比較する分析データがない。投資家は、ESGという定性的なものが中心の企業の取組みを定量比較しないといけない。また、企業の長期的価値向上に資する重要項目をそれぞれの企業の評価指標として見定めることも難しい。つまり、ESG投資も、投資対象企業の将来の収益性、競合優位性、成長性等を評価する指標となるKPI(Key Performance Indicator)がどれであるかを特定した上で評価しなければならない。企業側にとって、安定株主となり得るESG投資する機関投資家を呼び込むために、非財務情報を如何に定量的にわかりやすく示していくかが重要なポイントとなるのである。

*James Gifford, “Effective Shareholder Engagement: The Factors that Contribute to Shareholder Salience”, Springer, 2010

まとめ

① ESGの言葉を生みだしたPRIは、経済成長と環境保護の両立を目指すUNEPが銀行、保険会社、証券会社を巻き込みながら設立したパートナーシップUNEP FIの流れを汲んでいるため、投資家目線で策定されている。
② PRIには3,000機関以上のアセットオーナー、機関投資家、評価機関等が参画しており、彼らは安定株主になり得るので、投資されるために高いESG評価を取ることは企業にメリットがある。
③ ESGで評価されるためには、非財務情報を如何に定量化してわかりやすく示せるかが重要なポイントとなる。

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