連載:ESG

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#11.ESG評価~法制度と評価機関の観点、その対応~

2021-05-12

主なESG評価機関

著名なESG評価機関について前回で触れた。ESG評価について深堀りしていく。ESG評価を専業としているのは、カナダ、ドイツ、スペインの評価機関との合併の流れのあり、今はMorningstarの傘下となっているオランダの「Sustainalytics」、フランスのVigeoと英国のEIRISが合併した「Vigeo EIRIS」、米国の「ISS ESG」がある。ESG評価とESG指数の提供を行っているのは、英国の「FTSE Russell」、米国の「MSCI」、米国の「S&P Dow Jones Indices」である。ESG指数とは、企業をESGの観点から評価し、評価が優れた企業で構成した株価指数のことである。ESG指数の構成銘柄に選定された企業は、投資家にアピールすることができる。評価機関は欧米において再編が行われ、現在の状況になっている。

ESG評価についての法制度

評価機関は企業からの開示情報をベースに評価していくが、EU等ではESG情報の開示が一定の規模の企業の義務になっており、評価しやすい環境が整っている。EUは2014年に従業員500名以上の企業に対してESGの情報開示を義務づける「非財務及び多様性情報の開示に関する改正指令」を出し、加盟国にて法整備している。この非財務情報には、少なくとも環境、社会、従業員問題、人権尊重、腐敗防止に関する情報を含めることとしている。英国では、EUに先立って2013年に会社法規則が改正され、Strategic Report(戦略報告書)の発行が義務づけられている。戦略報告書では、財務観点のKPI(重要業績評価指標)とともにESGについてのKPI、その選定根拠やプロセスを記載することになっている。更に、企業の存在意義を表すパーパス、ダイバーシティを表す取締役、執行役員等の性別と人数の記載も義務づけられている。フランスでは、2015年に「グリーン成長に向けたエネルギー転換法」が成立した。温室効果ガス排出の削減、再生可能エネルギーの利用拡大を目的に、上場企業は年次報告書にて気候変動の影響に関連する財務リスクと、その対策の開示を義務づけられている。米国では、2015年にニューヨーク証券取引所が「ESG情報開示ガイダンス」を発行している。シンガポールでは、2011年にシンガポール証券取引所が「ESG情報開示ガイドライン」を公表してESG情報の開示を推奨、2017年より義務化している。日本では、東京証券取引所等が上場会社に対してコーポレートガバナンス報告書の提出を義務づけているものの、ESG情報の開示は義務化しておらず、欧米に立ち遅れている。

評価方法

それでは、ESG評価機関は、どのような観点で企業を評価していくのだろうか。評価機関では、基本的には、環境、社会、ガバナンスを企業の属する産業の課題も加味して、細かい項目にブレークダウンして、項目ごとに評価観点を決めて点数化、ウェイトをつけて総合的に評価する。Sustainalyticsでは、①どの程度リスクにさらされているか(Total Exposure)、②どの程度リスクを管理できているか(Managed Risk)、③管理可能にもかかわらず管理できていないリスクはどの程度か(Management Gap)等を評価してESG Risk Ratingを算出する。企業業績に重大なリスクをもたらすESG課題にフォーカスして「コーポレートガバナンス」「重大なESG課題」「産業特有の課題」という3軸で評価する。評価結果は0〜100のポイントで表され、数字が大きいほど問題があり、5段階で評価している。MSCIでは、甚大なコストが発生したり市場機会に影響したりする課題をキーイシューとして、産業ごとに特定する。キーイシューは、「リスク・エクスポージャー」と「リスク管理能力」の2 軸で評価し、企業ごとに環境、社会、ガバナンスそれぞれの「キーイシュー・スコア」を算出する。スコアの数値(0~10)に基づいて、7段階(AAA~C)でESG格付けがされる。
評価機関の評価項目は、環境、社会、産業等の変化に応じて変わっていく。企業が高いESG評価を得るには外部環境の変化への感度を高めて情報収集に努め、課題とされる項目にフォーカスして投資家、評価機関に積極的に情報開示していくことが求められている。

まとめ

① 主なESG評価機関には、ESG評価を専業としているSustainalytics、Vigeo EIRIS、ISS ESGや、ESG評価とESG指数の提供を行っているFTSE Russell、MSCI、S&P Dow Jones Indicesなどがあり、欧米を中心に再編されてきた。
② EU、シンガポールなどでは、一定の規模の企業に対してESGに関する情報の開示を義務化している。
③ ESG評価機関では、環境、社会、ガバナンスを企業の属する産業の課題も加味して項目にブレークダウンし、点数を付けて格付けを行う。項目は世の中の流れで変化するので、企業は外部環境の変化、課題への感度を高めていくべきである。

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