連載:ESG

印刷

#10. ESG投資の主なプレイヤー(アセットオーナー、運用機関、ESG評価機関)

2021-05-12

ESG投資に関わるアセットオーナー

ESG投資の主なプレイヤー、それぞれの役割、影響について述べていく。ESG投資の主なプレイヤーは、投資対象としては企業、投資する側としては、アセットオーナー、運用機関、ESG評価機関がある。投資する側のプレイヤーはPRI(Principles for Responsible Investment、国連・責任投資原則)に主に参加している主体でもある。PRIは、ESG投資についての機関投資家の行動規範を定めたもので、今はNPOとして同名で組織化されている。ESG投資に主体的に関わるプレイヤーはPRIの方針に賛同して活動している機関が多い。参加機関は、2020年10月時点で3,389機関にもなっている。
それでは、まず、アセットオーナーから見ていこう。主なアセットオーナーは、年金基金と保険会社である。2020年時点の世界の資産は、約279兆ドルであるが、そのうち、約91兆ドル、約33%、つまり3/1の資産を管理している。シンガポールのGIC(GIC Private Limited)、サウジアラビアのSAMA(Saudi Central Bank)、中国のCIC (China Investment Corporation)などのソブリン・ウエルス・ファンドとも言われている政府系ファンドは約10兆ドル、4%の資産を管理している。なお、投資銀行はリーマンショック後の規制で自己資産での運用が原則できなくなっている。この他、約93兆ドル、約33%は100万ドル以上の資産を有する富裕層の資産でプライベートバンクなどが運用している。ESG投資で影響力のあるアセットオーナーは年金基金と保険会社である。年金基金や保険会社は、資産を預かる期間が長期であるため、長期的なスパンで資産運用する必要があり、ESG投資との相性がいい。アセットオーナーはESG投資の原資を提供する役割を担っていて、運用機関へ意向を伝えるので、オーナーとして影響力が大きい。

運用機関と評価機関

これらアセットオーナーから信託されて資金を運用しているのが運用機関である。運用機関は、運用資産の収益を上げることが第一であるが、投資方針についてアセットオーナーの意向を強く受ける。規模が大きいのは、グローバルでは、2019年12月時点、いずれも米国の運用機関で、第1位はBlackRockで運用額は7兆ドル、第2位はVanguard Groupで6兆ドル、第3位はState Street Globalで3兆ドルである。日本では、2021年1月時点、第1位は野村アセットマネジメントで約40兆円、第2位は日興アセットマネジメントで約21兆円、第3位は大和アセットマネジメントで約20兆円となっている。
PRI策定の事務局となったUNEP FI(United Nations Environment Programme Finance Initiative、国連環境計画・金融イニシアティブ)に加盟していたHSBC Asset Management等の運用機関は、2004年にESGが株価に与える影響の調査をし、ESG課題をマネジメントすれば企業価値の上昇に寄与するとのレポートを纏め、ESGの有効性を検証している。この頃から、運用機関は投資対象の評価にESGを意識し始めていたのである。
ESG評価機関については、英国のロンドン証券取引所グループ(LSE)が 100%出資するFTSE Russell、1992年にカナダで設立された ESG評価機関であるJanzi Researchを買収したオランダのSustainalytics、1998年に設立され、2009年にKLDを買収した米国のMSCIが著名である。これら評価機関はグローバルで拠点を持っていて、ESG指数などを運用機関に提供している。評価する立場として、ESG投資への影響力が大きい。

ESG投資の規模と傾向

年金基金や保険会社は、100年スパンでの投資計画を立てていて、原則、短期的な売買を考えていない。こういったアセットオーナーから委託を受けて資産を運用している運用機関も長期的な視点での投資が求められている。サステナブル投資を推進しているGlobal Sustainable Investment Allianceが公表した報告書、「Global Sustainable Investment Review 2018」によると、グローバルでのサステナブル投資は約30兆ドル、そのうち、地域としてヨーロッパが最も多く、14兆ドルで全体の45.9%、次いで米国が12兆ドルで39.1% 、日本は2兆ドルで7.1%となっている。その前の2016年の調査からの伸び率は、ヨーロッパ約11%、米国約38%に対し、日本は約307%と約3倍の伸び率を示しており、カナダやオーストラリア・ニュージーランド地域を抜き、3位となった。ESG投資の市場として欧米が強いが、日本も市場として注目され始め、投資金額が増えている。ここで紹介した主なプレイヤーを受け手として意識した積極的な情報開示、対話を行っていくと、今、日本は注目されている市場であるので、ESG資金を集めやすいと考えられる。

まとめ

① ESG投資の投資する側としての主なプレイヤーは、アセットオーナー、運用機関、ESG評価機関である。アセットオーナーのうち、ESG投資に積極的なのは、世界の資産の1/3を保有する年金基金と保険会社である。
② アセットオーナーの投資方針の意向を受けて運用する運用機関も2004年頃からESGの企業価値への有効性を調査するなど、ESG投資を意識し始めた。
③ ESG投資の規模はグローバルで30兆ドル、地域の割合として欧米が大きく、日本は2兆ドルであるが、日本の投資総額の伸び率が大きく、市場として注目をされている。

Contact

お気軽にお問い合わせください

お問い合わせフォーム