連載:ESG

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#1 ESGとは?~その定義とCSRとの違い~

2021-04-02

ESGとは

ESGが、このところ益々、世間の注目を集めている。それは、機関投資家がESG担当を置くようになり、日本においても投資先の企業に対し、ESGを指標とした中長期的な事業計画の説明を求めていて、企業側もこれに応えようと情報開示し始めているからである。日本生命が「ESG投資」の手法をすべての投資や融資の判断に導入することを発表した。日本の機関投資家の97.9%がESG情報を投資判断に活用しているとのアンケート結果(経済産業省「ESG投資に関する運用機関向けアンケート調査」2019年12月)もある。
ESGとは、気候変動、環境汚染等の環境(Environmental)、社会問題等やステークホルダーとの関わり等の社会(Social)、コーポレートガバナンスのガバナンス(Governance)の要素を考慮して行う活動を意味する。

CSRとの違い

ESGに似ているものとして、CSR (Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任) を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。CSRは、環境への取り組みや新興国の恵まれない子供への支援などを行い、企業が社会的責任を果たし、ブランドを護る活動であり、良い取組みとして社会に評価され、収益と必ずしも結びつかなくてもよかった。しかし、ESGは、中長期的な時間の流れでよいが、リターンと結びつかなければならない、ここに大きな違いがある。
ESGという言葉は、機関投資家の行動規範を定めたPRI(国連・責任投資原則)の準備過程の中で、2004年頃に誕生したとされていて、機関投資家の行動規範から生まれてきたものである。このため、ESGはESG投資というように、投資と結びついて語られる。ESG投資と似ているものとして、CSRを考慮したSRI(Socially Responsible Investment、社会的責任投資)がある。SRIはESG投資よりも倫理的側面をより重視しており、軍需、ギャンブル、人種差別等に関わる企業をスクリーニングにかけて投資先から除外し、社会的価値への貢献を企業に求める。1920年代、米国のキリスト協会が資産運用する際に、倫理的に問題がある投資先をスクリーニングして排除したのが始まりとも言われ、本格的に商品化したのは米国の金融リサーチ会社KLDで、1990年に「Domini 400 Social Index」を開発、環境、労使関係、ダイバーシティ、人権等の状況を独自にスコアリングし、基準をクリアした企業に投資した。このインデックスの主なアセットオーナーは、やはりキリスト教財団であった。SRIに対して、ESG投資は、より企業の成長とリターンを重視している。ESGが整っている企業は、リターンが大きいとの考え方に基づいているのである。

リターンはあるのか

一般投資家やヘッジファンドが企業に対し、短期志向で企業のパフォーマンス向上を求めてくる傾向にあるのに対し、ESG投資を行う機関投資家は、長期的な視点で経営を見ている。これは、ESG評価の高い企業は、長期的に見て財務パフォーマンスも良いとの見通しからきている。オックスフォード大学のスミス・スクールと英国の運用機関であるアラベスク・アセット・マネジメントとが2014年に190以上の学術論文を共同で調査し、88%の論文が堅実なESG活動は企業のより良いパフォーマンスを導き、80%の論文が企業の株価パフォーマンスはサステナビリティ活動によってプラスの影響を受けること示していることを発表した。ESG投資に関わる機関投資家は企業の成長を長期的なスパンで見ている。企業も長期的な時間軸で経営にしっかりと向き合えるので、むしろ今の傾向は歓迎すべきことであると言えよう。

まとめ

① 日本の機関投資家の97.9%がESG情報を投資判断に活用している。
② CSRは、企業が社会的責任を果たし、ブランドを護る活動であり、収益と必ずしも結びつかなくてもよいが、ESGは、中長期的な時間の流れであってもリターンと結びつかなければならない。
③ ESG評価の高い企業は、長期的に見て財務パフォーマンスも良く、機関投資家は、この点を評価している。

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